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第5部開幕前夜(下)地域密着、大手に対抗――東急電鉄、グループ総出、エフパワー、サッカー人気活用(電力ビッグバン)

2016.03.07

きめ細かな営業網 駆使
 「イッツコムに入っているからテレビも安くなると聞いて、説明に来てもらうことにした」。2月上旬、東京急行電鉄二子玉川駅の改札前。東京都世田谷区に在住する50代後半の女性は駅員から説明を受けた後、改札に入っていった。(関連記事11面に)
戸別訪問し契約
 鉄道会社で初めて電力小売りに参入した東急。電力子会社の東急パワーサプライ(東京・世田谷)は東急主要駅前に特設ブースを設けて乗降客に電力契約の切り替えの営業に力を入れている。電鉄駅員も借り出すなどグループ総出だ。
 パワーサプライの村井健二社長は「沿線で電力シェア2割、イッツコムエリアは3割を狙う」と鼻息が荒い。イッツコムとは東急のCATV子会社のイッツ・コミュニケーションズ(同)。東急の電力販売の先兵役と位置づけられている。
 イッツコムが抱える営業部隊は約160人だ。放送通信サービス契約者宅に定期的に戸別訪問する際に電力の切り替えも促す。駅前特設ブースでも契約は受け付けず、イッツコムの社員が戸別訪問して契約を結ぶ手順をとる。「パソコンの設定など宅内に入れるCATV会社の強みを電力でも生かす。電力もセット販売すれば、放送通信の解約防止にもつながる」とイッツコムの高秀憲明社長はみる。
 鉄道定期券や東急カードのポイント付与、イッツコムの基本料割引――。東急はグループの様々なサービスと組み合わせた電力販売を打ち出す。販売チャネルでは東急ストア(東京・目黒)や東急リバブル(東京・渋谷)など、スーパーや不動産会社も活用する。
 「電力は生活サービスの1つ。電力販売だけに安住するつもりはない」。パワーサプライの村井社長は言い切る。視野にあるのは電力をテコにした鉄道やグループ施設への誘客だ。
 エネルギー管理システム(EMS)を使って電力契約者の利用状況を管理。夏場の電力需給逼迫時には、電車で東急の百貨店やスーパーに来店して家庭の電力使用量を減らせば、ポイント付与や電気代割り引きといった構想を描く。
 沿線内で消費者の周遊性を高めれば、東急グループ全体の底上げにつながる。「鉄道や流通、コミュニティーなどグループのサービスをつなげたい」(村井社長)。電力を東急グループのハブと位置づける。
 4月の電力小売り全面自由化では東京電力や関西電力といった大手の攻防に注目が集まる。だが長年培った地盤を生かした独自のサービスによって電力市場で活路を開こうとする企業も出始めている。
 サッカーJリーグ「北海道コンサドーレ札幌」の運営会社、コンサドーレ(札幌市)。新電力2位のF―Power(エフパワー、東京・港)と組んで電力販売に乗り出す。
 「電力小売りが自由化されるんだ。お前のところで、何かできるんじゃないか」。エフパワーの宇佐美慶人取締役が昨夏、コンサドーレ(札幌市)の野々村芳和社長に声をかけた。2人は慶応義塾大学のサッカー部で先輩後輩の関係だ。
 新たな電力サービスの名称は「エゾデン」。「人に地域に、還る電力。」をキャッチコピーにした。「コンサドーレ電力」にしなかったのは、規模拡大にはサッカーファンだけでない利用者をひき付ける、さらなる仕掛けが必要とみたからだ。
有力店に声かけ
 地元の有力ドラッグストア、サッポロドラッグストアー(サツドラ)に声をかけた。全道に店舗を持つだけでなく、グループで「EZOCA(エゾカ)」という独自ポイントカードも展開して120万人の会員がいる。電力事業拡大へ補完性は高いとみた。
 サツドラの富山浩樹社長にエゾデンの話が伝わったのは昨秋のこと。富山氏には当時、「ほかにも複数の新電力の話が舞い込んでいた」という。そのなかで「地域密着」を打ち出すエゾデンに魅力を感じた。
 エフパワーにとって北海道は需要開拓の重要エリアだ。昨年6月、北海道釧路市で採掘する石炭を使った火力発電所を2019年前半に建設すると発表した。知名度が低いエフパワーが、道内で電気を売りさばくには工夫が要る。そこで地域で高い人気を誇るサッカークラブと組む地域密着戦略が浮かんだ。
 売り上げの一部を地元のスポーツ振興に役立てるなど、割引率の競争だけでない新たな電力の選び方を訴えようとしている。
 人口が増えない日本では、企業は今後も安定した成長戦略が描きにくくなっている。そうした中で約8兆円が新たに市場開放される電力小売り全面自由化が4月1日から始まり、商機を見いだそうとする各社の競争が激しくなっている。
 
 
 日経産業新聞,2016/03/04,ページ:3

 

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