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食品サイト新設、衣料サイト誘導、オンワード、ECで「奇策」、共通ポイントを導入(危機のアパレル再生の行方)

2016.11.28

ネット専用ブランド

 オンワードホールディングス(HD)がネット通販強化に向けて“奇策”に打って出た。食品の専用サイトを新設し、ポイントの共通化などで衣料品サイトと相乗効果を出す。ネット専用の衣料品ブランドも立ち上げる計画。成長するEC(電子商取引)市場で独自性を出そうという試みだが、食のECは衣料品以上に競合が激しい。効果を出すには、両サイトでどれだけ魅力的な商材を集められるかが問われる。

 全国のご当地食材を販売する通販サイト「オンワード・マルシェ」を22日に立ち上げた。全国のオンワードの支店の営業担当者らが吟味した商品をサイトで紹介し、オンワードは仲介手数料を受け取る。

 酒類やコメ、調味料や器など7つのカテゴリーを設け、約3千点の商品を用意する。例えば佐賀県の「伊万里牛黒カレー」や、愛媛県の「こだわりみかんジュース」など、一般にはあまり流通していない質の高い食材を中心に集める。

 サイトのディレクターに迎えたグルメ雑誌の編集長、大西健俊氏が各地の生産者を取材。商品ごとに写真付きの紹介文を掲載する。将来的には海外向けの販売や、オンワードが自ら食料品の商品開発に携わることも視野に入れる。

 同社が一見すると本業とかけ離れた食のサイトを立ち上げたのは、顧客の裾野を広げたいという思いからだ。2009年から運営する衣料品のネット通販サイト「オンワード・クローゼット」で使える会員制度の会員は130万人まで増えたが、「ゾゾタウン」に代表されるネット企業に比べるとまだ規模は小さい。

 今後はマルシェとクローゼットの購入者に付与するポイントを共通化。こだわりの食材に興味を持つ感度の高い消費者に、オンワードの衣料品にも関心を持ってもらう。保元道宣社長は「生活を豊かにするという点で食と衣服には共通点がある。ファッションを提案する1つのきっかけにしたい」と力を込める。

 オンワードは18年度までの中期経営計画で、ECと海外事業の強化を掲げる。今年4月には通販サイト運営会社を買収した。今後はネット通販向けブランドの開発も検討する。保元社長は「百貨店に網を張るだけでは若い世代に出会えない。ECに集う顧客に合ったものをタイムリーに提供したい」とする。

 保元社長は通商産業省(現経済産業省)出身で、01年にネット企業に転職。06年のオンワード入社後も主にネット事業に携わってきた。EC強化への思いは強く、中計最終年度のネット通販の売り上げ目標も今期予想の2倍以上の360億円と高水準だ。

 オンワードの衣料品の販路は依然として百貨店が中心。一方で、衣料品販売ではファッションビルや駅ビルなどに加えて、ネット企業が急速に存在感を高めている。今回の“奇策”に続いて、新たなM&A(合併・買収)などネット強化に向けた保元社長の次の一手に注目が集まる。
 

 日経MJ(流通新聞),2016/11/25,ページ:7