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リーグVに沸く(中)金融や電力にも恩恵――広島企業に波及大きく、首都圏・遠方でも顧客獲得(カープ景気)

2016.09.20

 広島東洋カープの25年ぶりの快進撃は広島県企業の顧客獲得戦略に大きく貢献した。もみじ銀行はカープの成績に応じて金利が上乗せされる定期預金の残高が今年、過去最高になった。中国電力は4月から開始した首都圏での電力販売で、カープと連携したポイントサービスを軸に契約獲得を進める。優勝を記念した新キャンペーンも始まり、カープの恩恵は今後も広がりそうだ。
1日で111億円
 優勝の翌営業日の12日。広島銀行は広島市中心部にある本店外壁にカープの選手とお祝いメッセージを掲載した垂れ幕を設置した。高さ25メートル、横40メートルという巨大さで、多くの通行人が足を止めた。同日から優勝を記念し、オリジナルカープグッズが当たる定期預金キャンペーンも開始した。
 もみじ銀は今年3~6月に募集した「カープV預金」で1981億円を集めた。カープ連勝が始まった6月中旬ごろから申し込みが増え、最終日の6月30日は各店舗に顧客が殺到、1日で111億円を集めた。
 同預金は1995年、広島総合銀行時代に始まった。当時はバブル崩壊で景気が冷え込み、カープも優勝から遠ざかっていた時期。球場の観戦客も少なくなる中、何とかカープを盛り上げようと考えた1人の行員の発案で商品化された。22年目を迎えた今年、初の優勝金利(0・2%)上乗せとなった。
 上乗せ金利によるもみじ銀の負担額は約4億円だ。小田宏史頭取は「積年の感謝の気持ちを込めて喜んでお支払いしたい」と顔をほころばせる。優勝を記念し、投資信託を購入した顧客の中から抽選で、10月12日からカープが戦うクライマックスシリーズ(CS)の観戦チケットを贈るキャンペーンも始めた。
県外から観戦客
 中国電力は4月から首都圏で電力販売を開始、カープ人気は追い風になった。大々的な広告宣伝は行わず、東京ドームや神宮球場で開催されるカープ戦でチラシを配るなどして知名度を高め、9月時点で約200件の契約を獲得した。
 清水希茂社長は優勝について「広島県をはじめ全国のカープファンに大きな感動を与えてくれた」とコメント。12日から同社サイトで活用できるポイントやCS観戦チケットが当たる「カープ優勝おめでとうキャンペーン」も開始した。
 遠方からの観戦客需要も大きい。リーガロイヤルホテル広島では7月から始めた「カープ女子宿泊プラン」など独自プランが人気を集め、特に今月6~8日の稼働率はほぼ100%だったという。7、8日はマツダスタジアムでの優勝決定が見込まれていたため、大阪、関東方面からの観戦客が多かったとみられる。「今年は特にカープのユニホームを着た宿泊者など、ファンの利用者が多く見受けられた」(同ホテルグループサービスチーム)
 25年ぶりのセ・リーグ優勝の次は32年ぶりの「日本一」が視野に入る。広島銀の池田晃治頭取は「日本一が実現すれば今以上の盛り上がりになる。広島銀もそれに合わせ様々なことをやっていく」と期待感をあらわにした。カープを武器にした企業の顧客開拓戦略はさらに加速しそうだ。
 その際、顧客に喜んでもらえる商品やサービスをどうつくるか。これまで蓄積してきた各社の開発力が試されているといえる。
 
 日本経済新聞 地方経済面 広島,2016/09/14,ページ:23