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自販機ビジネス(3)飲料各社、ポイント内容競う(よくわかる)

2016.09.12

 飲料メーカーにとって自動販売機は定価に近い価格で売れるため、収益性が高い販路だ。だが2014年の消費税率の8%への引き上げ以降、割安に販売するコンビニやスーパーに消費者が流れており、各社は利益率の低下に苦しんでいる。
 15年前に4割強を占めた自販機経由の比率は、最近では3割まで低下している。飲料メーカー各社が客足を取り戻すために相次ぎ取り入れているのがポイント制だ。
 動きが速かったのはキリンビバレッジ。12年からカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と飲料の自動販売機で共通ポイント「Tポイント」を付与するサービスを始めた。会員カードの読み取り機が付いた機種を設置し、商品1本ごとに1ポイントがもらえる。
 16年に入るとスマートフォン(スマホ)アプリを通じたポイントサービスが広がると同時に「お得感」やエンターテインメント要素が加わってきた。飲料売上高の約9割を自販機が占めるダイドードリンコは4月からポイントがたまる専用アプリの配信を始めた。対応自販機にスマホをかざすと、購入額1円あたり1ポイントがたまる。
 ポイントに応じてクルーズ旅行などの景品に応募できる。1日からはLINEと提携し、LINEの仮想通貨とポイントを交換できるようにした。LINEを使う若年層の自販機利用を促す。
 日本コカ・コーラは4月から全国の自販機と連動するアプリ「コーク・オン」を展開。自販機で商品を購入するとスタンプがたまり、15本ごとに1本が無料になる。
 サントリー食品インターナショナルは10月から社員の健康意識を高めたい企業向けのポイントサービスを始める。オフィスや工場などにある自販機に専用の近距離無線技術(ビーコン)を搭載した専用機器を設置。従業員はスマホの専用アプリを立ち上げて自販機に認識させ、現金などで飲料を購入するとポイントがたまる仕組みだ。
 緑茶「伊右衛門 特茶」など7品目のトクホ飲料の購入で5ポイント(1ポイント=1円)を付与するが、他の飲料は1ポイントにする。ポイントはトクホ飲料と交換できる。歩いた距離に応じてポイントをもらえるようにするなど、健康意識を高める工夫も凝らす。
 ただポイントシステムは投資もかさむ。ダイドードリンコは18年度までに全国設置の自販機の半分にあたる約15万台を対応させる計画。投資額は約30億円に達する。オペレーターが運営する自販機では対応が遅れるなど一筋縄では行かない側面もある。各社はコンビニなどでは買えない自販機専用商品を投入するなど、客足回復に向け知恵を絞っている。
 
 日経産業新聞,2016/09/07,ページ:2