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プリペイド決済広がる、スマホアプリ・仮想通貨台頭、後払い好まない消費者に。

2016.07.20

 事前に金額をチャージしたり、一定額のカードを購入したりするプリペイド(前払い式)決済が広がっている。民間調査で同市場は2021年度に約13兆円と、15年度の2倍弱になる見通し。スマートフォン(スマホ)アプリを使ったサービスや仮想通貨が台頭。後払いより家計を管理しやすく、クレジットカードを持たないシニアや子供の利用も伸びそうだ。
 矢野経済研究所(東京・中野)によると、15年度の市場規模は約7・5兆円。14年度より17・6%伸びた。さらに16年度は15・8%増の約8・7兆円となり、拡大基調は当面続くと予測する。
 けん引役の1つがアプリ決済だ。スマホ画面の2次元バーコードを読み取って決済する仕組みが多く、既存のPOS(販売時点情報管理)端末を大きく改修せず、安く導入できる。決済時に付く購買ポイントもスマホで管理しやすくなる。
 DVDレンタルの「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、企業をまたいで複数のポイントを管理し、プリペイド決済できるアプリ「スマホサイフ」を開発した。消費者には、財布に何枚もあるポイントカードやスタンプカードを1つのアプリにまとめられる利点がある。
 まずモスフードサービスが20日に採用。プリペイド機能を備え、ポイント管理にも使える。8月にもカジュアル衣料店のライトオンとイーグルリテイリング(東京・渋谷)、10月にTSUTAYAが採用する予定だ。
 こうした複数の企業や店の支払いに使えるプリペイドサービスは、「POSAカード」と呼ばれるプラスチックカードでも広がっている。クレジットカード大手のPOSAカードは与信審査がなく、「Visa」などと組んで多くの加盟店で使える点などが後払いを好まない消費者に受け入れられている。
 今後は「ブロックチェーン」と呼ばれる技術を使った仮想通貨も、プリペイドの一種として浸透する見通しだ。
 ブロックチェーンは分散型の台帳技術を意味する。ネット上でつながった多数のコンピューターが同一のデータを持ち、同一のプログラムで処理する。お互いにデータを認証しあうため、1カ所のデータを改ざんしても不正はできない。
 データの管理・運用コストが大きく下がるとされ、GMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長は「記録コストの激安革命だ」と強調する。
 迅速な海外送金などに有効で、三菱東京UFJ銀行が仮想通貨の世界最大の取引所を運営する米コインベースと資本・業務提携を決めた。
 矢野経済研究所によれば、ブロックチェーンを使った地域型電子マネーの発行も検討されているという。今後は様々な実証実験が進む見通しで、ブロックチェーンの採用とともに、プリペイド決済市場の成長スピードが増す可能性も秘める。(山端宏実)
 
 
 日経MJ(流通新聞),2016/07/20,ページ:11