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中部電の「カテエネ」、ウェブで暮らし総合支援、買い物でポイント、サービス拡充で競争力。

2016.07.11

  中部電力が電気料金の確認などができる自社のウェブサイト「カテエネ」を通じて、暮らし全体にサービス領域を広げようとしている。これまで他社とのポイント提携などを進めてきたが、8月以降はさらにサイトを通じた買い物などが便利になるようにサービス内容を拡充する。電力自由化が4月から始まり、本業の競合は強まる見通し。暮らし支援機能の拡充をてこに顧客の囲い込みを進める狙いもある。
 「暮らし全体にカテエネのサービス領域を広げることが、電力自由化の競争で独自色を出す要素となる」。中部電力の幹部はカテエネ強化の狙いをこう説明する。
 カテエネは2014年4月に「クラブカテエネ」としてサービスを開始した。当時は電気使用量や電気料金、省エネ情報の提供が中心だったが、ポイントサービスの導入などを進めてきた。
 そして今年4月からの電力自由化の開始を受け、カテエネの強化が中部電力の次の成長を支える鍵を握りつつある。
 まず4月のリニューアルの目玉は、凸版印刷の手掛ける電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」の採用だ。シュフーは、契約者の地域や好みに合わせた情報を配信する。国内最大規模で全国3100法人、10万店舗以上が参加。例えば、カテエネの登録者はシュフーを通じて近隣のスーパーなどの特売情報を受け取れる。
 シュフーの登録店だけでなく、中部電力が提携した店舗からの限定情報の配信を受けることもできる。カテエネの中に開設した「みんなの得トクひろば」では、企業の出す商品や試供品を応募できる仕組みになった。
 加えて4月の刷新では、電力と他の事業を組み合わせる取り組みも拡大している。中部電力などが14年に設立した「e―暮らし」が提供する家庭用料金メニュー「暮らしサポートサービス」だ。カテエネ登録者は電気料金に月300円を追加で支払うことで、家庭でのトラブルの24時間365日対応や、ハウスクリーニングなどを割引料金で受けられる。
 こうしたサービスを提供する中部電力にとっては、契約者の利便性を高めて契約流出を食い止めることにつながる。
 だが、6月時点でカテエネ登録者数は約109万件と、100万件を突破後に伸びが鈍化。17年3月末までに200万件の目標を立てるが、達成は難しい状況だ。中部電力では「ある程度加入すべき家庭は加入し、飽和状態になってきている」と分析する。
 そこでこの夏以降もカテエネのてこ入れをはかる。「カテエネの登録会員が100万件を超えたことで、様々な企業に話を聞いてもらえることができるようになった」(中部電力)ことはプラス。暮らしのインフラに育成するツールを加えていく。
 現在検討しているのは、「得トクひろば」を通じて通信販売サイトにアクセスして買い物することなどで、電気料金などに充当できるポイントが受けられるようにする仕組みだ。
 三菱UFJニコスが運営するネット通販のポータルサイト「POINT名人」が同様の仕組みで、「AMAZON」や「楽天」など400社近くのサイトと提携し、クレジットカード会員の利便性を高めている。
 自由化をきっかけに、電力会社が家庭のよろずごとを一括して引き受ける時代が来るのか。カテエネを軸にした手探りが続く。
 
 
 日経産業新聞,2016/07/05,ページ:9