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サイモンズ、「ふるさと納税型」共通ポイント――都市のおカネ地方に、失効ポイント、事業者に寄付(異能経営)

2016.06.21

ローカル線、プロバスケ、沖縄の離島…続々参加
 出身地などの自治体に寄付すると税金の一部が控除される「ふるさと納税」と同じように、ポイントで地域貢献できるカードが今、注目を集めている。サイモンズ(東京・中央)は自治体やプロスポーツクラブなど各地のポイントカードをつなげる。斉川満社長の「都市のお金を地方に流す」理念に共鳴する事業者は約500にのぼり、ゆるく社会貢献したい今の消費者の心をとらえつつある。
 温泉で有名な登別、洞爺湖に近い、人口3万5千人の北海道伊達市。今年3月にポイントカード「伊達まちカード」の発行を始めたところ、3カ月で市民の1割強の4千人が会員登録した。伊達市民なら買い物だけでなく、市の体育館やプールの利用、健康診断を受けてもポイントがたまるユニークなサービスを提供したことが受けている。
 実は市民以外でも3300人が登録した。このカードは伊達市内の商業施設だけでなく、サイモンズに加盟する全国3300店での買い物でも購入額の1%相当のポイントがたまる。サイモンズと提携した理由について同市の担当者は「人口減少が進む中、顧客情報を集めてマーケティングに取り組んでいかないと地域経済は立ちゆかなくなる」と説明する。
 沖縄県の離島、竹富島では昨春、フェリーから宿泊施設、土産店まで島の主要観光施設ならどこでも使えるポイントカードを発行。現在の会員は1500人で、ほとんどが観光客だ。「町の主要産業は観光だが8割は日帰り。『外貨』をより稼ぐには観光客のデータベースづくりが欠かせない」(竹富町)としてサイモンズに加盟した。
 これまで地域のポイントカードといえば専ら市町村単位。各地のポイントカード事業者をネットワーク化するサイモンズと組むことで、より広域から人やカネを呼び込もうとしている。
 サイモンズが運営するポイント対象の買い物総額は年々拡大傾向にある。2015年は37億円と14年比1割強伸びた。
 サイモンズの特徴は有効期限を過ぎて失効したポイントは各ポイントカード事業者があらかじめ指定する先に寄付できることだ。例えば青森県七戸町の場合、子供向けなどの図書購入費に充てられる。失効ポイントは通常、ポイントシステムの運営事業者の収益になるが、斉川社長は「多少のもうけを捨てても、地域や社会にお金を還元することが事業者との信頼につながる」という。
 失効ポイントの寄付は事業者側にとっても都合がいい。「既にポイントカードを何枚も持っている消費者に新たに一枚持ってもらうには、他のカードにはない付加価値が必要」(七戸町)だからだ。それが地域や社会貢献であれば、異を唱えにくくなる面もある。
 とはいえ前例がないだけに、サイモンズの経営モデルを理解してもらうことは簡単ではない。目先の収益は追わず、じっくり時間をかけて各事業者と信頼関係を築くことが斉川社長の身上。自治体と初の協業となった北海道鷹栖町とは4年越しの交渉を重ねた。
 信頼を得るため、もう一つ提示したのは、各事業者がデータベースを利用しやすくしたこと。例えば会員への販促メールの配信は好きなときに自由にできる。
 プロバスケットボール「秋田ノーザンハピネッツ」を運営する秋田プロバスケットボールクラブ(秋田市)ではシステム連携させ、ファンクラブ証と一体化したポイントカードを発行している。1万枚近いカードを発行すると同時に、チームを応援する約16の店舗をサイモンズの加盟店にした。高畠靖明専務は「スポーツを軸に地域のコミュニティーを盛り上げていくのに、協業できるのはサイモンズしかなかった」と語る。
 ここにきて事業者の裾野も広がってきた。お茶の水女子大学は5月、図書館に入館できるポイントカードの発行を始めた。「卒業生と接点をつくっていくうえで、クレジットカードに比べて気軽に持ってもらいやすい」という。
 大手百貨店も乗り出す。地元商店街とのポイントカード事業に取り組む伊勢丹相模原店(相模原市)では「地域密着ではなく地域一体で集客していくため、百貨店ではポイントを出しても、商店街でしか使えないようにした」(木下史朗前店長)という。
 斉川社長は「大手の共通ポイント事業者に加盟するのは大手の小売り・サービス業。大手が手を出せない市場はまだ十二分にある」と意気盛んだ。(永井伸雄)
人口減の地方に商機あり
独自モデル、活路開く
 都市と地方の間で消費の格差が広がっている。食品スーパー3団体によると2015年の既存店売上高は前年比1・5%増だが、関東地方に限れば2・0%増。百貨店も昨年は全国が0・2%減ったが、東京に限れば3・4%増となった。
 20年の東京五輪に向けて、首都圏への出店を増やす動きは小売り、外食ともに加速している。「賃料、人件費は多少高くても、人が集まるので採算に合う」(大手外食チェーン社長)からだ。
 人口減少が進む地方だが、大手との競合が少ない分、工夫次第では商機は十分ある。例えば移動スーパーを全国展開するとくし丸(徳島市)。地方の中小スーパーから商品供給を受け、シニアら買い物弱者が多い地域を、販売を委託した個人事業主に移動販売してもらう手法で12年の設立から3年あまりで年間流通総額は17億円にのぼる。
 家電販売のボランタリーチェーンを全国で1万店展開するコスモス・ベリーズ(名古屋市)も「地方は高齢化が進んでいるからこそ、大手量販にはないサービス、品ぞろえを打ち出せば成長余地は十二分にある」(三浦一光会長)という。
 サイモンズが進める地域貢献型の共通ポイントカードも人口減少や高齢化に悩む地方をネットワーク化することで、都市の住民との距離を縮める狙いがある。
 この取り組みは今の消費者のトレンドに合う。電通総研の松本泰明主任研究員は「東日本大震災以降、社会貢献への関心の裾野は広がり、社会貢献のカジュアル化も進んでいる」と指摘する。
 肩肘張らずに、ゆるく貢献したいという消費者には、失効したポイントを寄付するくらいがちょうどいい。サイモンズの共通ポイントはお得さと便利さだけでない新たな事業モデルを築こうとしている。
斉川社長、「陸マイル」の仕掛け人
 サイモンズの斉川満社長の前職は日本航空。1997年のロンドン駐在から帰国した翌年、担当したのが飛行機に乗った距離に応じてポイント(マイル)がたまるマイレージプログラムだった。
 斉川氏らが取り組んだのは、飛行機にあまり乗らない人たちを会員化すること。後の流行語でいえば、「陸(おか)マイラー」の組織化だ。レンタカー会社や引っ越し業者、大手証券会社など次々と提携先を広げ、早々に1千万人規模のマイレージ会員を築き上げた。
 2000年には日航と三菱商事が折半出資したマイレージのマーケティング会社、イーマイルネットの社長に就く。「全国民をJAL会員化する」という夢を抱き、異業種との協業を次々に打ち出す。高級輸入車のBMWと組んだ、車を買ったらマイルを提供するキャンペーンは話題となり、大成功をおさめた。だが、自前のシステムの維持管理コストが重荷となり事業の黒字化ができず、02年に解任された。
 サイモンズでは過去の失敗を糧に、システムはもちろん、自治体や企業、大学など外部と広く連携してポイントカードのネットワークを築く。
 
 
 日経MJ(流通新聞),2016/06/15,ページ:1

 

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