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電力先物上場へ皮算用、東商取、模擬取引、中国電・三井物産など19社、価格変動リスク避け安定売買、参加企業の拡大カギ。

2016.06.13

 東京商品取引所(東商取)は6日、電力先物の模擬取引を始めた。電力会社や商社など19社が参加し、使い勝手を確かめる。4月の電力小売り全面自由化で、価格変動リスクを避けながら安定的に電力を売買するニーズが高まっている。東商取は先行する欧米の実情も参考に、2016年度中の上場を目指す。
 「この価格なら買いだ」「利益はいくらになる?」。東商取9階の会議室、8日まで実施する第1弾の模擬取引。中国電力、東燃ゼネラル石油、三井物産など10社の約50人の参加者は売り買いの数字が並ぶモニターを食い入るようにのぞき込み、パソコンを通じて注文を出していた。
使い勝手検証
 欧州の電力取引所が導入するナスダック社のシステムとインターネット回線をつなぎ、初日は16年10月物や17年物など5商品を売買した。
 模擬取引は参加企業の要望を探る狙いがある。今回のシステムは取引単位が長期から短期まで幅広く、地域ごとの価格差にも対応している。使い勝手を検証し、制度設計に反映させる考えだ。
 参加した三井物産の松岡憲一郎商品市場部エネルギー営業室長は「模擬取引は電力先物を体感できるチャンス。早いタイミングで関わりたいと思っていた」と意気込む。
 商品先物取引では、将来売買する商品の価格をあらかじめ確定して、価格変動リスクを回避する。この仕組みを電力の売買に生かすのが電力先物だ。東商取は原油、金、大豆といった幅広い商品を上場しているが、無体物の取引は初の試みだ。
 例えば電力会社が6カ月後の16年12月に発電する電力を、1キロワット時12円で売る先物契約を結んだとする。決済期限を迎えたら送電線を通じて電力を供給する。その時に現物市場の価格が10円に下がっていても、先物市場で売値を12円で固定しているので損は生じない。
 先物を買い戻す「反対売買」で差金を決済し、現物取引のリスクを補う方法もある。先物と現物はほぼ同じ値動きをとる。決済期限時の買い戻し価格は10円となり、手元には売値との差額である2円が残る。現物市場で電力を10円で売っても、手元の2円を合わせれば12円の収入を確保できる。実際の電力先物取引では差金決済が中心になるとみられる。
 同様に、発電設備を持たない電力小売会社やユーザー企業は先物市場で電力の購入価格を確定できる。先物を12円で買っておけば、現物価格が14円に上がっても値上がりリスクを避けられる。取引価格を固定すると相場変動を利用した取引はできないが、長期の事業見通しは立てやすくなる。
 東北電力は「燃料の先物と電力の先物を組み合わせて使うことで効果的にリスクを管理できる」と期待する。電力子会社のサミットエナジーと参加する住友商事コモディティビジネス部の永尾英二郎部長代理は「小売り自由化で卸売市場も売買が活発になりヘッジニーズが高まる」とみる。
半数は非公表
 東商取が電力先物の上場を目指す背景には、電力小売りの全面自由化がある。異業種から参入した電力小売会社などが自由に電気を売れるようになった。業界の成長には使いやすい電力市場が欠かせない。電力会社は通常の企業以上に安定経営を求められる。リスク回避は重要な課題だ。
 電力自由化で先を行く欧米では欧州エネルギー取引所(EEX)、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)などが電力先物を上場。市場を発展させた。経済産業省はかねて電力先物の導入を検討してきたが、自由化が進まない中で議論は盛り上がらなかった。大手電力、商社、金融機関、東商取などを交えて協議が始まったのは15年になってからだ。
 実験でも約半数の企業は社名の公表を避けており、様子見の感はぬぐえない。先物につきまとう投機のイメージが参加をためらわせている面もあるようだ。「周回遅れ」の電力先物取引を成功させるには、多様な参加者が要る。利点を広く伝え、参加企業をどこまで広げられるかが、上場実現のカギを握る。
 
 
 日経産業新聞,2016/06/07,ページ:3

 

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