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ソフトバンク、核家族に的、電力小売り戦略二分、電力大手など、大家族割安に。

2016.01.18

 ソフトバンクは12日、家庭向け電力小売りを4月に始めると発表した。電気料金だけでなく、データ通信もお得なプランを用意。東京電力管内の標準的な3人家族で年間約9千円を節約できるなど、核家族に配慮した。大家族か核家族か。電力小売りの全面自由化を巡り、新旧各社の攻め方は分かれてきた。
 電力サービス「ソフトバンクでんき」を提携相手の東電と始める。東電管内のほか関西電力と中部電力の管内で始める。ソフトバンクの携帯電話利用者が使える。主力商品は「バリュープラン」で3~4人世帯、電気料金が月8千~1万6千円の家庭が主な対象だ。
 多くの電力小売りの新サービスが電気を多く使っているかどうかの境目としているのは1カ月の使用量が300キロワット時。ソフトバンクの主力商品もここまでは定額で、それ以上は料金が割安になる。ただ利用量が300キロワット時未満にも配慮した。使わない量に応じ共通ポイント「Tポイント」がもらえたり、携帯で利用可能なデータ通信量が増えたりする。スマートフォンの月額利用料も最大300円割り引く。
 28日から同社の携帯取扱店や特設サイトで受け付ける。同日記者会見した宮内謙社長は「日本の家計をもっとお得にしたい。(2017年度に自由化される)ガス販売も検討したい」と述べた。
 電力大手や新電力による顧客争奪戦が本格化している。8兆円と言われる新市場に参入するのは現在120社前後だが、戦略は微妙に異なる。
 物差しの1つが家族構成。東京や神奈川といった核家族の多い東急沿線がサービス地域の新電力、東急パワーサプライ(東京・世田谷)は、電力使用量がそれほど多くない世帯向けに割安サービスを打ち出す。
 かたや電力大手は大家族を重視する。12日に発表した中部電の新プランは、電気料金が月3万円の家庭が2年間で2万7千円弱お得になるメニューを設定した。従来の電気料金は使用量が多いほど単価が高かった。今後は大家族ほど値下げ余地は大きい。
 新電力でも大家族に絞る動きがある。12日に山梨県の地場スーパーを通じて受け付けを始めたベンチャーのアイ・グリッド・ソリューションズ(東京・千代田)。月の使用量が300キロワット時までは東電と同額だが、それ以上だと東電より10%割り引く。「地方は大家族が多いことに対応した」という。
 電力は目に見えず、季節要因もある。どの会社のどのプランが一番お得かはわかりにくいのが実情だ。料金比較サイトも出始めているが、電気代に最も敏感な中高年や主婦に向け、きめ細かい相談対応が必要になる。
(榊原健、大和田尚孝)
<大家族や富裕層に照準>
<核家族や2人世帯などがお得>
 
 
  日経産業新聞,2016/01/13,ページ:3