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電力自由化に地域格差(眼光紙背)

2016.04.25

 電力小売りの全面自由化が1日から始まった。初日までの電力会社の切り替え件数は約53万件。ここから興味深い事実が見えてくる。
 電力会社を変えた消費者が最も多かったのは、東京電力が供給する首都圏の約33万件。沖縄を除き、最も少なかったのは中国電力エリアの500件だった。
 注目したいのが北海道だ。中部電力とほぼ肩を並べる約2万件の消費者が切り替えを決めた。北海道電力は震災後に電気料金を2度、上げた。一度も値上げしなかった中国電の供給区域に比べ、消費者の電気料金への関心は高い。
 加えて大切なのは、北海道ガスや生活協同組合コープさっぽろなど、北海道電に正面から挑む新規事業者が存在することだ。中国電の本社がある広島市の消費者が選べる電力会社は限られるのが実情だ。
 中国電より割安な料金を提示するのは難しい。首都圏や関西圏に比べ新規参入が進まないのもうなずける。だが、政府は電力市場改革の目的の一つに消費者の選択肢拡大を掲げる。スタート時点で見る限り、これに応えられているとは言いがたい。
 いずれ電力自由化の進展を評価しなければならない時が来る。料金水準や事業者のシェア、切り替えた消費者数など様々な評価軸があるが、自由化による恩恵の地域格差の視点も忘れるべきではない。
 
 
 日経産業新聞,2016/04/19,ページ:24