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消費再増税MJ1000人調査、守れ!!「賢実」消費――「駆け込み」に後悔あり、予算は5万円未満(増税前夜サバイバル)

2016.04.04

家電は需要一巡 消耗品が主戦場
 来年4月に予定される消費税率10%への引き上げまであと1年。消費増税先送りも検討される中、日経MJが実施した消費者1000人アンケートでは、堅実さを増した消費者の姿が明らかになった。駆け込みにかける予算は「5万円未満」が急伸。高所得層でも生活防衛色が強まっている。例を見ない短期間での再増税。消費者は前回の教訓を踏まえ、より賢く買い物をしようとしており、購買意欲の衰えは避けようがない。
 今回の1000人調査で増税前の駆け込み、買いだめ予算を「5万円未満」とした人は、前回調査(消費税率8%への引き上げ前の2013年12月に実施)と比べ、2倍強の46%に急伸した。5万円以上と答えた人の割合も前回比13ポイント減の23%となり、財布のひもは固い。
 一方で、前回は42%でもっとも多かった「0円(しない)」は31%まで押し下げられ、約7割が駆け込み、買いだめを検討している。
 買いだめを前回より「増やす」「どちらかというと増やす」とした人は26%。4人に1人が買いだめを増やす結果になり、「減らす」「どちらかというと減らす」の6%を大きく上回った。
 値の張る耐久消費財の需要は前回の増税時に先食いされている。経済産業省の専門量販店販売統計によると増税直前(14年1~3月)の家電大型専門店の商品販売額は、増税後(15年1~3月)の1・4倍にあたる1兆4千億円に拡大。駆け込み需要でパソコンなどの情報家電や洗濯機、冷蔵庫といった高額の生活家電の売れ行きが伸びた。
 今年はオリンピックイヤーとあって、4Kテレビの駆け込み需要はあるかもしれないが、大型家電の買い替え需要は一巡。10%への引き上げでは消耗品が価格競争の主戦場となりそうだ。
 買いだめを増やしたいものとしてもっとも多かったのは「洗剤やトイレットペーパーなどの日用消耗品」で86%。「調味料や缶詰など保存のきく食料品」(71%)、「化粧品や整髪料などの理美容消耗品」(36%)が続いた。
 いなげや新ゆりヨネッティー王禅寺前店(川崎市)にいた80代主婦は「化粧品やトイレットペーパーなど日用消耗品を買い込むつもり」。2年前の増税では買いだめしなかったというが「2ケタになると上がる実感が強い」と苦笑いする。
 日用品の買いだめは高所得層まで広がりつつある。世帯年収別にみると駆け込みや買いだめで5万円未満の出費を見込む割合は世帯年収1000万~1200万円未満の高所得世帯で49%。200万円未満(41%)、200万~400万円(54%)と並ぶ水準だ。
 今年1月からの控除縮小で年収1200万円以上の会社員の所得税負担が重くなり、17年にはさらに1000万円以上の人も増税対象に加わる。痛税感が高まり、高所得者層でも消費の堅実さが増しているようだ。
 もっとも、2年前に駆け込み購入や買いだめで後悔したものが「ある」と答えた人も14%いた。洗剤や調味料を買い込みすぎた人が多く「長い間使わず劣化してしまった」(43%)、「増税後の方が値下がりした」(37%)、「買い込みすぎて邪魔になった」(35%)との後悔が続いた。
 消費意欲の冷え込みに小売り各社は危機感を募らせる。イオン傘下のダイエーは消費増税後の個人消費への影響も見据え、ディスカウント業態「ビッグ・エー」の店舗数を今後3年で2・5倍の500店にする目標を掲げる。ビッグ・エーの三浦弘社長は「より付加価値を求めてきた消費の潮目が昨年末から変わり、価格志向が強まってきた」と話す。
 「10%への再増税は、8%への引き上げ時よりインパクトが大きい」とみるのは高島屋の関係者。「お客さんに手にとってもらえる価値ある商品・サービスを拡充し、経費節減を進めて筋肉質な組織を作っていく」(同)と気を引き締める。
 18年9月末には、時限立法で認められてきた税抜き表示の特例の期限が切れる。消費減退を懸念するのは、食品スーパーのサミットの田尻一社長だ。「価格表示が総額表示に戻ると価格が8~10%上がって見える。これは増税よりも消費へのインパクトが大きいが、全く議論がされていないようだ」(同)。食品スーパー各社は、本体価格表示を認める時限立法の恒久化を求めている。
 また、軽減税率については「わかりにくい」「どちらかというとわかりにくい」と答えた人は81%に達した。増税による負担を減らすための制度だが、制度の複雑さに困惑が広がる。
 軽減税率の適用がある「テークアウトを増やす」(30%)、「イートインや出前、宅配を増やす」(17%)という人も少なくない。
 外食業界も対応を急ぐ。モスフードサービスの桜田厚会長兼社長は「持ち帰り窓口のある店を増やしたり、テークアウト専門の実験店を検討する必要がある」と話す。
 消費者行動に詳しいマスターカード・アドバイザーズのサラ・クインラン氏は「前回の増税以降、消費者は生活必需品以外の出費を抑えるようになった。再増税に踏み切れば駆け込みとその後の買い控え傾向はより強く表れるだろう」とみる。
次は通信・光熱費
所得増えず
節約に走る
 消費税の引き上げが実現すれば、消費者の節約の動きは加速しそうだ。今回の調査で増税後「節約する」「一部節約する」と答えた人は91%で前回調査(92%)からほぼ横ばい。ただ増税後「より安い店を利用する」「外食や旅行などぜいたく消費を控える」と答えた割合はいずれも62%と、前回調査より20ポイント近く増えた。
 背景には上がる物価と上がらない給与への不安感がある。16年度と比べた17年度の世帯年収については「減りそう」(31%)との見通しが「増えそう」(14%)を大きく上回った。実際、総務省の家計調査によるとここ3年の勤労者世帯の月平均実収入はほぼ横ばい。一方、消費者物価指数は14年の消費税率引き上げ以降、食材価格を中心に上昇を続ける。
 増税をにらみ、消費者は光熱費など毎月かかる固定費を削りにかかっている。今後節約するものとして「外食」(80%)、「衣服」(69%)に次いで多かったのは「光熱費」(52%)。4月から始まる電力小売り自由化を前に「電気料金プランを見直す」と答えた人は34%、「携帯電話などの通信費を見直す」という人は35%に達した。
 3月中旬、KDDIの直営店「au SHINJUKU」(東京・新宿)を訪れた埼玉県所沢市に住む男性会社員(31)は2年半ぶりに携帯の料金プランを見直した。「毎月1万2千円ほどかかっているのでもうちょっと安くならないかなと思って」。不要なオプションを外し「月に2千円ほど安くなった」と喜ぶ。
 合わせて紹介されたのはKDDIが4月から提供する電力サービス。「お客様の場合、切り替えてもらうだけで電気代の1%がキャッシュバックされますよ」。店員の言葉に男性は「考えてみます」とうなずいた。
 KDDIやソフトバンクは1月から電力サービスの受け付けを開始。電気と携帯電話のセット割引プランが支持され「申し込みは順調に推移している」(両社)という。安倍政権による携帯料金の引き下げ要請で相次いで割安プランも発表されており、携帯料金の見直しも進みそうだ。
 「増税後はポイントサービスや割引を積極的に利用したい」(69歳主婦)、「再増税されたら孫への出費を減らす」(61歳パート女性)と生活防衛色を強める声は高まるばかりだ。(岸本まりみ、伊神賢人)
 調査は3月4~6日、マクロミルを通じてインターネットで実施。全国の20代以上の男女1000人から回答を得た。
 
 
 日経MJ(流通新聞),2016/04/01,ページ:1

 

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