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迫る電力全面自由化(4)広がる異業種参入――新サービスに期待(時事解析)

2016.01.12

 消費者が電力自由化時代の到来を最も感じるのが異業種の小売り参入だろう。自社の商品やサービスと組み合わせて電気を売ることで、新しい売り方やサービスが生まれる可能性がある。
 電力小売りに参入するには経済産業省に登録が要る。2015年12月28日時点で登録済みの事業者は119社。石油、通信、鉄道、商社、住宅など、本業は多岐にわたる。
 ソフトバンクは携帯電話やインターネットと電力のセット割引を始める。丸紅は楽天と組み、ネット通販に出店する事業者に電力を割安で供給する。JXエネルギーは家電量販店などでも電気を売る。
 既存の電力会社も対抗に動いている。東京電力は携帯電話会社や電気料金の支払いなどでたまるポイントサービス、音楽配信サービスなどと相次いで提携した。
 消費者を引き付けるきめ細かな料金メニューを用意することも重要だ。知恵の競争が勝敗を分ける。東電の広瀬直己社長は「消費者に選んでもらうには、定食のような料金から、いかにスペシャルランチに切り替えてもらえるかを考える必要がある」と語る。
 自由化時代には電力会社を選ぶ基準は価格の安さだけではない。どのような発電方法でつくられた電気であるかも大切な情報だ。
 電力取引監視等委員会がまとめた小売りのルール案は、小売事業者は販売する電力の電源構成を開示することが望ましいとしている。太陽光や風力など再生可能エネルギーを優先して買いたい消費者が、その比率で選ぶことも可能になる。(編集委員 松尾博文)
 
 
  日本経済新聞 朝刊,2016/01/07,ページ:27